KYO-KAブログ

京都にあるプロダクションチームのブログです。

生命保険の営業を断ったことで、僕が少しだけ経営者に近づけた話

「KYO-KAプロダクション」代表取締役CEO(就任予定)の田中です。

 

 

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 ある人から「起業家と経営者は違う。お前は経営者になれるか?」
と、僕がまだ東京にいるときに聞かれたことを度々思い出します。

 

今回の記事ではタイトルの通り、
「生命保険の営業を断ったことで、僕が少しだけ経営者に近づけた話」をブログにまとめます。

 

 まだ経営者でも、ましてや正式に起業しているわけでもない僕が、
「経営者とは!」と偉そうに語るつもりはありません。

ただ、学生とサラリーマンしか経験していないこんな僕が、
ほんの少しだけ経営者に近づけたんじゃないか、と思った瞬間があったので、
皆さんに読んで頂ければと思います。

 

 

 

「エイベックスの先輩から生命保険の営業を受けた」

2018年10月に同じ法人営業部隊の先輩が転職のため、退職されました。

その転職先が外資系生命保険会社で、ゴリゴリのトップ営業マンが集うところでした。

 

僕はこの先輩から営業を受けることになるのですが、
先輩の営業手法がものすごく上手かったのです。

 

普通、生命保険の営業というと生保レディーと呼ばれる女性が自宅に訪問して、
商材の説明・提案をするというイメージですが(古臭い僕のイメージかもしれません)
その先輩は「商材の知識は頭に入れたから、提案する練習に付き合って欲しい」と転職から約1ヶ月後の11月に連絡してきたのです。

 

 そして、「まだ正式には独り立ちしていないから、俺の提案を見て上司のOKを貰わないといけない。だから、うちのオフィスで提案の練習をさせて欲しい」との理由で、集合場所は先輩が働くオフィスになりました。


いやぁ、この時点で営業手法としてかなり上手い謳い文句ですよね。
僕も「それなら仕事終わりにカフェでよくない?」と少し疑問に思いましたが、
お世話になった先輩からのお願いだったのでそんなことを口にはできず、
LINEで「了解しました!」と返事をしました。

 

そして11月の半ば頃、昼休みの時間を利用して先輩の働くオフィスに向かいました。

久しぶりに先輩と会ったのですが、なんだかスーツの着こなしとか、
雰囲気が芸能界ではなく保険の営業マンになっていました。
なんというか...弁護士的な感じです。

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全体的にテカテカしてる感じです

 

そして先輩の上司の方と名刺交換をして、軽い世間話をしてから
会議室で早速提案の練習を受けました。



まず、僕が持つ生命保険に対するイメージだとか、
生命保険はどう行った場面で効力を発揮し、どれくらいの保険金を貰うことができるのか。また、僕の人生設計的にどういったプランが最適なのか等、かなり細かくお話しました。

提案を聞きながら、先輩はエイベックスで営業している時や、会議で話している時よりも、すごく話し方やテンポがゆっくりになっているなぁ、なんてことを考えていました。

 

もともと先輩はかなりやり手の営業マンだったので、
その業界・商材や顧客の特性に合わせて手法を変えているのだと思います。

 

そしてここからですが、先輩は1時間ほど僕のニーズをヒアリングしたのち、
 「今日はわざわざ来てくれてありがとう。今日もらった意見を元に、来週までに田中にピッタリのプランを考えてくるから、また提案練習に付き合ってよ」
と、言ったのです。

 

僕はこの瞬間、「そういうことか!」と思いました。

提案の練習という体でオフィスに呼び出し、商材の説明とニーズをヒアリングする。
その情報をもとに見込み顧客に対して最適なプランを組み立てる。
そして再提案して成約を獲得する。

上手いやり方ですね。
おそらくこの手法は社内でマニュアル化されているのだと思います。
流れとしてかなりスムーズだったので、この方法で訴求すると前もって決めていたのでしょう。

営業はとにかく話を聞いて貰える状況を作ることが最初の関門です。
先輩後輩の関係性、提案"練習"という理由をつけて、この状況にもっていったのはとても賢いやり方です。

しかも、僕が1月に起業のために会社を辞めることなども話をしたので、
「起業するのであれば、最悪の事態に備えて保険には入っておいた方が良い」
との提案も受けました。

 

ここまでいくと、僕は来週の再提案"練習"を断ることができません。

 

 そもそもお世話になった先輩の話を断るだけでも難しいのに、
僕に最適なプランを提案してくれて、しかも上司の目の前です。

正直、生命保険に何の興味もなかったのでこの時点で断りたかったのですが、
先輩のメンツを潰すわけにもいかず、「分かりました!来週もよろしくお願いします!」と心にも思っていないことを口にすることになりました。

 


補足ですが、僕は決して生命保険が悪い商材だと思っているわけではありません。
先輩の会社は名の知れた大手企業ですし、保険加入によるアフターフォローも充実しています。

それこそ万一僕の身に何かあった時、金銭的に大きな助けになると思います。

しかし、僕にとって今必要なものではなかった。
何よりも今欲しいのは「僕らの起業にとって役に立つ情報やコネクション」なのです。
これから京都に戻る身からすると、東京で契約することが起業の何かに繋がるとは思えませんでした。

こうして僕は、何とも言えないやりきれない気持ちで仕事に戻って行きました。

 

 

「再提案"練習"の日」

1週間後の仕事終わり、僕は重い足取りで再度先輩が働くオフィスに向かいました。
全く興味がない提案に、わざわざ自分から赴くというのは相当なカロリーです。

僕はこの時点でちゃんと断ろうと心に決めていました。
先輩の提案だから、という理由で契約してもきっと後悔するだろうし、
契約解除するのも億劫だからです。

 

オフィスについてから、コーヒーを一杯頂き、前回とは違う部屋で提案練習を聞きました。

 

先輩は1週間前に聞いた僕のニーズをもとに、僕に合った最適なプランを提案してくれました。

分かっていたことですが、これは練習を装った本物の提案でした。

 

田中の人生設計的にこれは必要だけど、これは必要ないと思う。

このプランで何歳まで積み立てると、これだけ増えているから自分の事業にも当てることができる。

だから月額23,000円のこのプランが最適だと思う。

 

など、本当に親身になって提案をしてくれました。

 

そして最後に、「京都だろうがどこにいようが、相談があればすぐに駆けつける。だから俺に任せてくれないか?」

と、言われました。

 

それはとても真剣な提案でした。

 

先輩のクロージングを受けて、僕は一度目を瞑り、自分の考えをまとめました。

 

そしてこう言いました。

 

 

「今、この保険に入ることは経営者として許されません」

 

 

僕の回答に先輩は驚いた表情をしていましたが、僕は遠慮せずに思うことを全て話しました。

 

「先輩の提案はとても魅力的だと思います。僕のニーズを丁寧にヒアリングしてくれて、その上で最適な人生設計までプランニングしてくれる。僕がこれからもエイベックスにいるなら、間違いなくここで契約していました。

 

だけど、僕はこれから経営者になります。

1つの企業の全責任を負った人間です。与えられた仕事をして、毎月必ず固定の給料を貰えるサラリーマンとは違います。

 

僕はまだ正式に会社を立てたわけではありませんが、すでに副社長となる友人の人生を背負っています。

彼はこんな僕に人生を預けると言ってくれたんです。

彼が幸せになれなかったら、それは全て僕の責任です。

 

この契約に伴う23,000円は、これから僕らにとって命よりも大切な資本金なんです。

この23,000円は会社の未来のために使うお金であって、断じて僕個人の保険に使うべきものではありません。

 

このお金があったら...なんて後悔はしたくないんです。

 

僕の夢は起業して、仲間と共に、京都の大学生の可能性をもっと広げることです。

 

今はこの夢の実現だけを見ています。

だから、契約はできません。

丁寧な提案をして下さったのに申し訳ありません」

 

僕はそう言って頭を下げました。

 

先輩は僕が頭を上げるまで待ってから

「そうか、田中の素直な気持ちを聞けて良かった。

無理に契約して、モヤモヤしたまま田中にお金を払ってもらうのは営業マンとして失格だから、これで良かったと思う。

きちんと断ってくれてありがとう」

 

と言ってくれました。

 

その後はたわいもないエイベックスでの昔話をして、僕はオフィスを後にしました。

 

 

夜の表参道を一人で歩きながら、僕はなんだか不思議な気持ちになっていました。

 

 

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エイベックスビル前の表参道

 

先輩に言った言葉は事前に決めていたわけではありません。

あの瞬間に、僕が思ったことを素直に口にした結果でした。

 

お金について考えると、このときすでに、自分のお金を使うことは会社のお金を使うことと同義だったのです。

 

自分の全てを自分の会社に注ぐこと、これくらい本気な思いが経営者に必要なのだとおもいます。

 

それまでのサラリーマンから一歩抜け出して、

ほんの少しだけ経営者に近づけたのではないかと思えた、そんな出来事でした。

 

きっとこれから想像もできないほどの困難が待ち構えているのだろうけど、生命保険を断ったこの決断が、思考が、何かしらの形で未来に繋がればと僕は思います。

 

代表取締役CEO 田中(就任予定)